はじめに 実技試験こそが合否の分かれ目
「学科は受かったのに、実技で落ちてしまった…」
FP2級試験でよく聞く悔しい声です。実は、実技試験の合格率は学科試験より低く、多くの受験生がここでつまずきます。
しかし、安心してください。実技試験には明確な出題パターンがあり、それを押さえれば必ず合格できます。
本記事では、日本FP協会の「資産設計提案業務」に焦点を当て、頻出計算問題の解法を徹底的に解説します。
第1章 実技試験の全体像を把握する
1.1 試験の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
試験時間 | 90分 |
問題数 | 40問 |
出題形式 | 三肢択一式 |
合格ライン | 60点以上(100点満点) |
配点 | 各問2.5点(一部異なる) |
1.2 出題分野と配点バランス
【実技試験の出題割合】
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A. ライフプランニング:25%
B. リスク管理:15%
C. 金融資産運用:20%
D. タックスプランニング:15%
E. 不動産:10%
F. 相続・事業承継:15%
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重要 6分野すべてから出題されるため、苦手分野を作らないことが大切!
1.3 学科試験との違い
比較項目 | 学科試験 | 実技試験 |
---|---|---|
知識の深さ | 広く浅く | 実践的・応用的 |
計算問題 | 30%程度 | 60%以上 |
資料読取 | ほぼなし | 頻出 |
総合問題 | なし | あり |
第2章 頻出計算問題トップ5と解法パターン
2.1 第1位 キャッシュフロー表の穴埋め問題
出題パターン
キャッシュフロー表の一部が空欄になっており、計算して埋める問題。
例題
【田中家のキャッシュフロー表】(単位:万円)
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年度 | 2024 | 2025 | 2026 |
収入 | 600 | 620 | (ア) |
支出 | 480 | 500 | 520 |
年間収支 | 120 | (イ) | 120 |
貯蓄残高 | 500 | 620 | (ウ) |
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変動率:収入は年2%上昇
解法
(ア) 620 × 1.02 = 632.4 → 632万円
(イ) 620 - 500 = 120万円
(ウ) 620 + 120 = 740万円
攻略ポイント
変動率の計算を確実に 前年の貯蓄残高+年間収支=今年の貯蓄残高 単位(万円)に注意
2.2 第2位 6つの係数を使った計算
頻出する係数と使い方
係数名 | 使用場面 | 覚え方 |
---|---|---|
終価係数 | 現在の100万円が10年後いくら? | 「終わりの価値」 |
現価係数 | 10年後の100万円の現在価値は? | 「現在の価値」 |
年金終価係数 | 毎年10万円積立、10年後の合計は? | 「年金を積み立てた終値」 |
減債基金係数 | 10年後に100万円必要、毎年いくら積立? | 「債務を減らす基金」 |
資本回収係数 | 100万円を10年で取り崩し、毎年いくら? | 「資本を回収」 |
年金現価係数 | 毎年10万円を10年間もらうための元本は? | 「年金の現在価値」 |
例題と解法
【問題】
年利2%で運用しながら、毎年30万円を
15年間積み立てた場合の積立総額は?
年金終価係数(2%、15年):17.293
【解答】
30万円 × 17.293 = 518.79万円
→ 約519万円
2.3 第3位 所得税の計算
計算の流れ
1. 総所得金額の計算
2. 所得控除の合計
3. 課税所得金額 = 1 - 2
4. 所得税額 = 3 × 税率 - 控除額
5. 税額控除を差し引く
6. 復興特別所得税を加算(2.1%)
例題
【佐藤さんの所得】
給与収入:700万円
給与所得控除:180万円
所得控除合計:150万円
【計算】
給与所得:700万 - 180万 = 520万円
課税所得:520万 - 150万 = 370万円
所得税(速算表より):
370万 × 20% - 42.75万 = 31.25万円
速算表(2025年)
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万〜330万円 | 10% | 9.75万円 |
330万〜695万円 | 20% | 42.75万円 |
695万〜900万円 | 23% | 63.6万円 |
2.4 第4位 住宅ローンの返済額計算
借入可能額の計算
【年収倍率方式】
借入可能額 = 年収 × 倍率(5〜7倍)
【返済負担率方式】
年間返済額 = 年収 × 返済負担率(25〜35%)
例題
【問題】
年収600万円、返済負担率25%の場合、
毎月返済額の上限は?
【解答】
年間返済額:600万 × 25% = 150万円
毎月返済額:150万 ÷ 12 = 12.5万円
2.5 第5位:相続税の計算
基本的な流れ
1. 課税遺産総額の計算
遺産総額 - 基礎控除(3,000万 + 600万×法定相続人数)
2. 法定相続分で按分
3. 相続税の総額を計算
4. 実際の取得割合で配分
例題
【相続財産】1億2,000万円
【法定相続人】配偶者、子2人
【基礎控除】
3,000万 + 600万 × 3人 = 4,800万円
【課税遺産総額】
1億2,000万 - 4,800万 = 7,200万円
【法定相続分での税額計算】
配偶者:7,200万 × 1/2 = 3,600万円
→ 3,600万 × 20% - 200万 = 520万円
子1人:7,200万 × 1/4 = 1,800万円
→ 1,800万 × 15% - 50万 = 220万円
相続税の総額:520万 + 220万 × 2 = 960万円
第3章 実技試験の時間配分戦略
3.1 理想的な時間配分
【90分の使い方】
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0〜5分:問題全体を確認、易しい問題にマーク
5〜60分:計算問題を中心に解答(1問1.5分目安)
60〜75分:知識問題を解答
75〜85分:見直し・マークミスチェック
85〜90分:最終確認
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3.2 問題を解く順番
【おすすめの解答順序】
1. 知識で解ける問題(10分)
↓
2. 簡単な計算問題(20分)
↓
3. 資料読取問題(20分)
↓
4. 複雑な計算問題(30分)
↓
5. 見直し(10分)
第4章 ケアレスミス防止の10箇条
4.1 計算ミスを防ぐチェックリスト
- 単位を確認(円?千円?万円?)
- 税込み・税抜きを確認
- 小数点の位置を確認
- %と小数の変換(25% = 0.25)
- 端数処理の指示を確認
- マイナスの見落としに注意
- 計算過程をメモに残す
- 検算する時間を確保
- マークシートのズレに注意
- 最後に全問解答を確認
4.2 よくあるミスと対策
よくあるミス | 対策 |
---|---|
単位の間違い | 問題文に単位を○で囲む |
計算順序ミス | 式を書いてから計算 |
転記ミス | 数字を指差し確認 |
時間不足 | 難問は後回し |
第5章 直前期の対策法
5.1 1ヶ月前からの学習計画
Week 1-2:過去問演習
- 過去5回分を時間を計って実施
- 間違えた問題の解説を熟読
- 計算パターンをノートにまとめる
Week 3:弱点克服
- 苦手分野の計算問題を集中練習
- 係数表を暗記
- 税率表を暗記
Week 4:総仕上げ
- 予想問題を本番形式で実施
- 時間配分の最終調整
- 計算用具の準備
5.2 試験前日・当日の心得
前日
□ 計算機の電池確認
□ 係数表の最終確認
□ 税率表の最終確認
□ 早めに就寝(6時間以上)
当日
□ 計算機(予備含む)
□ 筆記用具(予備含む)
□ 受験票
□ 身分証明書
□ 時計(アナログ推奨)
第6章 合格者からのアドバイス
6.1 合格者の声
💬 「係数の使い分けは、問題文の『から』『まで』に注目!『10年後まで』なら終価係数です」(30代・銀行員)
💬 「キャッシュフロー表は部分点狙い。完璧でなくても、できるところから埋めていく」(40代・主婦)
💬 「計算過程は必ずメモ。見直しで助かることが多い」(20代・会社員)
6.2 不合格からの学び
💬 「学科の知識だけでは不十分。実技特有の出題形式に慣れる必要があった」
💬 「時間配分を失敗。難しい問題に時間を使いすぎて、簡単な問題を解く時間がなくなった」
まとめ 実技試験は「慣れ」が9割
合格への5つの鉄則
- 計算パターンを体で覚える
- 時間配分を徹底練習
- 係数表・税率表を完璧に暗記
- 計算過程を必ず書く
- 過去問を最低5回分解く
最後に伝えたいこと
実技試験は決して難しくありません。
出題パターンが決まっているため、しっかり対策すれば必ず合格できます。
本記事で紹介した頻出問題と解法パターンを繰り返し練習し、自信を持って本番に臨んでください。
あなたの合格を心から応援しています!